
栃木県 鹿沼市 入粟野(いりあわの)。
北東にある「尾鑿山(おざくさん)」の麓に、その尾鑿山を祀る神社「賀蘇山神社(がそやまじんじゃ)」があります。
同じ山と神を祀る、2つの神社「賀蘇山神社」「加蘇山神社」
この「尾鑿山」を祀る神社は、賀蘇山神社の他にも、この山を挟んだ北東側にある同じ鹿沼市の上久我という所に「加蘇山神社(かそやまじんじゃ)」があります。

文字の一文字違いと、読み方が濁点の有無の違いだけの、とても良く似た社です。
それぞれ同じ山、同じ奥宮を祀っていますが、ここ入粟野の賀蘇山神社では「尾鑿山」、上久我の加蘇山神社では「石裂山」と、読み方は同じですが別の文字が用いられています。
ここ賀蘇山神社の「尾鑿山」と、加蘇山神社の「石裂山」は、両者ともに「おざくさん」とその山に宿るとされる「賀蘇山神」を信仰した遥拝殿が建てられています。「賀」と「加」違いの理由は解りませんが、深い山に隔てられた神社は、それぞれ主祭神の一柱に、賀蘇山神社が「武甕槌命」、加蘇山神社が「武甕槌男命」と、重なっています。
このことから、神社の創建時には何らかの繋がりがあったと推定が出来ると思います。




そして建屋の並ぶならされた土地があり「手水舎」「御祈禱殿」が美しく保たれています。



青い天狗面の左側には「弘化 四 丁(ひのと)未(ひつじ)年 四月 吉祥日」との文字が読めます。
日本の元号、弘化(西暦1844~1848年)時代の4年(1847年)の奉納であり、その右には「世話人」と読めますので、下に名前が書かれている多くの方々に尽力よって寄進がなされたのが見て取れます。
現在のこの御祈禱殿は約200年前の建物だそうですので、そののちに奉納された事になります。




賀蘇山神社は御祈禱殿から上流側にあり、距離は100mほど離れています。いったん坂を下りますが、その間には摂社が2つあります。
その一つが「猿田彦命(さるたひこのみこと)」を祀る神社です。
猿田彦命は日本神話の国造りに登場する神です。


その隣には「嚴島(いつくしま)神社」があり「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」が祀られています。
市杵島姫命は、やはり猿田彦と同様に日本神話に登場する女神で、天照大神の子の一人。
天孫降臨(天照大神がその孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を葦原の中つ国(地上世界)に遣わした日本神話の出来事)の際、天照大神は、瓊瓊杵尊を地上に遣わす際、その養育係として市杵島姫命を同行させたという。
前述した猿田彦命は、その地上世界にて、瓊瓊杵尊の道案内をした、とされています。



賀蘇山神社の主祭神は「天之御中主神」「月読命」そして前述した「武甕槌命」。
天之御中主神は日本神話において最初に登場する神。月読命は伊弉諾命(いざなぎのみこと)によって生み出された、天照大神の弟神とされています。
武甕槌命は、茨城県鹿嶋市に総本社がある鹿島神宮の主神で、武神として知られています。鹿島神宮には徳川家康が関ケ原合戦前に戦勝祈願した事はとても有名です。
また、雷神・剣の神とされています(Wikipediaより)。


本殿の西側には、かつて日本最古とされた「神代杉」の切株があります。
「神代杉」と聞くと、関東地方では、千葉県鴨川市の清澄寺にある「清澄の大杉」が有名ですが、下写真によれば、往時の賀蘇山神社の神代杉はそれ以上に目通りが太く、樹高も往時は高かったことになり、関東では最古であり最大だった事になります。
落雷と火災によって失われてしまったのは、とても残念です。






「御祈禱殿」は、200年以上が経過した建物です。このあたりは寒暖差がある地域だとは思うのですが、躯体はしっかりと保たれ、美しく、管理も行き届いているように見えます。
この大きく広い建物は、かつては宿坊としても機能していたのかも知れません。

種類は少ないですが、お守り、おみくじ、御朱印も売られています。
代金は写真左上の木箱に入れ、頂くようになっています。
賀蘇山神社の宮司さんは、御祈祷殿と同じ敷地内にある住居にお住まいです。御祈祷などの際には声掛けが必要です。
また、お手洗いは御祈祷殿内にあり、声を掛ければお借りする事も出来ます。






御祈祷殿の東側には「賀蘇山神社遥拝殿」があります。

遥拝殿の東側、賀蘇山神社駐車場の奥から「尾鑿山(石裂山)」直下にある御本社(奥宮)へ至る道もあるようですが「現在は不明瞭になり荒れているようだ」と、山向こう側の「加蘇山神社」の御朱印を管理されている方に聞きました。
上の写真、賀蘇山神社遥拝殿の案内板には「大人の健脚でも九十分を要し」とあります。加蘇山神社から御本社(奥宮)までは、大人の足で約60分。こちらからの道のりの険しさゆえ、人々の足が遠のいてしまったのかも知れません。

なお、賀蘇山神社から車道を上流側へ約3km(車で5分)進むと「前日光つつじの湯交流館」があり、日帰り入浴や、地粉を使った蕎麦をいただくことができます。

御祭神 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
月読命(つきよみのみこと)
武甕槌命(たけみかづちのみこと)※武神。茨城県鹿島神宮の御祭神
御利益 五穀豊穣 産業発展 医薬長寿
お守り 有り
御朱印 有り(書置き 3種類)
参拝者数 少ない
所要時間 御祈禱殿・賀蘇山神社・賀蘇山神社遥拝殿 約1時間
駐車場 神社階段下に約15台程度
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