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栃木県 足利市 山川町。
関東平野の北の端でもあり、関東山地の南の端でもある低山が連なるところに、懸造りの小さな社があります。
珍しい懸造りの社
名称は「道了大権現」。
地域でもあまり知られていない小さな社で、グーグルマップでも、ピンポイントである程度まで拡大をしないと表示されないようです。
ちなみに「道了(妙見道了)」とは、相模国(現:神奈川県)の南足柄市にある「最乗寺」の創建に尽力し、寺の守護と衆生の救済を誓い天狗になったと伝えられる修験道の僧です。
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8f/%E5%A4%A9%E7%8B%97%E3%81%AE%E9%9D%A2%EF%BC%88%E7%9C%9F%E9%BE%8D%E5%AF%BA%EF%BC%89.jpeg/640px-%E5%A4%A9%E7%8B%97%E3%81%AE%E9%9D%A2%EF%BC%88%E7%9C%9F%E9%BE%8D%E5%AF%BA%EF%BC%89.jpeg)
この道了を祀る「道了尊」は全国各地に存在しており、このサイトの中でも群馬県みどり市にある大間々神明宮と共に「はね瀧道了尊」を紹介しています。
![](https://nature-history.com/wp-content/uploads/2023/07/20230108_135811-scaled-e1706915278177-160x90.jpg)
駐車場は、傍にある「長林寺」の駐車場を利用します。
看板にも書かれているように、参拝者とハイカー以外の駐車は禁止されています。
傍にある「長林寺」の方が丁寧に管理をされている
ちなみに「道了大権現」は長林寺の方が管理してくださっている祠ですので、駐車は可能です。
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長林寺の駐車場を出て道路を道なりに進み、長林寺の東側にある池を過ぎると、道了大権現への参道が見えてきます。
![](https://nature-history.com/wp-content/uploads/2024/01/20231223_135634-1024x768.jpg)
周囲は林の中であり、私が訪れた1月は周囲の広葉樹が落葉しているため陽が差し込み明るさがありますが、夏季は葉に覆われるため、この時期ほど明るさはないだろうと思います。
赴きある長い石段
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参道は殆どが石段になっており、数段に分かれていますが、最後の石段が最も長く急になっており、見上げるのに近い感覚です。そして最後は、自然の岩を削った石段になっており、この部分の段数は少なく短いですが、とても急になっているので、足取りには注意が必要です。
けれども、この社に向かって坂道を伸びている石段は、実に赴きある風景です。
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お堂を下から見上げます。斜面にお堂が建てられているのが見て取れます。
ここからは、自然岩を削った石段を登ります。
斜面は急で、石段の一段あたりの高さはやや高めで、かつ踏み面は完全な平坦でなく凹凸がありごつごつしているため、手も使い登るのが安全です。
因みに、この時は長林寺の方が落ち葉を清掃してくれていたので、踏み面は歩きやすい状態でした。普段から管理をしてくれているようです。有難いですね。
道了信仰の始まりは神奈川県南足柄市の「大雄山最乗寺」そして「道了尊五大誓願文」
岩を削った石段を登り終えると、少し平坦な場所になっています。
ここには「平成二年開扉大祭記念 道了尊五大誓願文石碑」というものがあります。そしてその「五大誓願文」のうちの一つのくだりが石碑に刻まれていました。
前述の通り、道了は大雄山最乗寺に出自を持つ僧で、その道了信仰に「五大誓願文」というものが出てきています。
調べたところ、駒澤大学のホームページ内の「仏教と現生利益」にて知る事ができました。
※駒澤大学HP「仏教と現生利益」より引用
http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/20947/KJ00005099980.pdf![](https://nature-history.com/wp-content/uploads/2024/01/20231223_140935-768x1024.jpg)
![](https://nature-history.com/wp-content/uploads/2024/01/20231223_140921-768x1024.jpg)
一、常に三宝尊をおそれ、言質和順の心を以て我を念ずる者は八苦の抜済を獲せしむべし
二、常に四恩をおそれ慈悲心を以て我を念ずる者は七難悉(ことごと)く除きて武勇の術を獲せしむべし
三、常に父母師長をおそれ平等心を以て我を念ずる者は衆々の悪病消滅を獲せしむべし
四、常に自讃名誉毀他の意をおそれ正道心を以て我を念ずる者は衆人の愛敬を獲せしむべし
五、常に作業の事をおそれ初より間断なき心を以て我を念ずる者は福徳円満を獲せしむべし
上の誓願文の中の「我」とは、道了の事を指し、道了の出自である大雄山最乗寺では道了の存在を救済佛として位置付けていた、とあります。
![](https://nature-history.com/wp-content/uploads/2024/01/20231223_140942-1024x768.jpg)
道了大権現を横から見ると、自然岩に懸造りで建てられているのがわかります。建屋は木製で朱塗りの塗装がされています。床下の柱は、現在はコンクリート製で白い塗装がされていますが、恐らくかつては木製であったのでしょう。
他にもたくさんある「懸造り」の社
また、触れるのが遅くなりましたが「懸造り」とは・・・
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f7/Haiden-kakezukuri.jpg/640px-Haiden-kakezukuri.jpg)
最も知られているのは、やはり京都の清水寺ではないでしょうか。
ですが、この近辺では栃木県佐野市内にも、近頃はパワースポットとして知られており、日本名水百選にも選ばれている「出流原弁財天」の見事な懸け造りがあります。
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正面の扉には鍵は付けられていますが、日中の時間帯は長林寺の方によって開錠されていますので、訪れた方が自身で扉を開け閉めして、参拝したりお賽銭を入れる事ができます。
ちなみに、扉の閉まった状態で格子状の小穴からお賽銭を入れようとしても、少し部屋の中央寄りに置いてある賽銭箱には入らず、畳の上に落ちてしまう事になります。
実際、私が訪れた時にも、畳の上に何枚かお賽銭が落ちていたので、僭越ながら拾って賽銭箱に入れさせて頂きました。
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多くの道了尊と同様に、ここにも天狗の面が祀られています。ほとんどの場合は人の顔よりも大きなもので、面の種類も赤い天狗の面と、黒い烏天狗の面が奉納されている場合が多いようです。
また、道了尊以外でも、各地の山上に祀られている神社に天狗面が奉納されているのも目にします。
道了大権現。周囲を山に囲まれた良い社ですが、訪れる人が少ないので、もっと多くの人に見てもらいたい社です。
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